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執筆者の写真THE CODE 編集部

需給悪化懸念に配慮した流通株式比率向上策

更新日:2021年12月22日



7月5日(月)の引け後に、東京産業(8070)が売出しと同時に自己株式取得枠の設定を決議した。



売出しの概要


売出人 :三菱商事

売出株数 :3,347,600株

(発行済株式数(除く自己株式数)の13.89%。三菱商事保有株の全株)

売出価格 :2021/7/13-7/15までのいずれかの日の終値のディスカウント

売出しの目的 :持ち合いの解消、株主層の拡大、株式分布の改善及び流動性の向上及びコーポレートガバナンスの強化


自己株式取得枠の概要


取得株数(上限):2,000,000株(発行済株式数(除く自己株式)の7.22%)

取得金額(上限):10億円

取得期間 :売出しの価格決定日から6営業日後の日から2022/1/31まで



第2位の株主による売出しに対し、自己株取得枠の設定を公表することで需給悪化の緩和を企図した格好である。三菱商事は発行済株式数の13.9%を所有する「主要株主」(総議決権の10%超を保有する株主)であり、このままでは上場市場区分の形式基準の「流動株式比率」の分子から控除されることから、これを売り出すことで流通株式比率の向上を図り、2022年4月の市場区分変更時におけるプライム市場区分認定を企図したものと推察される。


過去の持ち合い解消の際には株式の需給への悪影響を回避するために、大株主による売却をTosTNetにより翌朝、自社株買いで受けるケースが散見されたが、即時の自社株買いは「流通株式比率」を直ちに押し下げてしまうことから、今回は自己株式取得枠の設定のみアナウンスすることで売出しの需給への悪影響を回避しつつ、市場買付の方法で約半年間かけて自己株式を取得していくものと見られる。


なお、自己株式の取得開始時期を売出価格決定日の6営業日後としたのは、売出の受渡日(売出価格決定日の5営業日後)の翌日を自己株式の買付開始日とすることで、売出価格が未定のままで発行会社が自己株式を取得することを避けつつ、売出しに参加した投資家にも自社株買いに応じる機会を与えるためのものと推察される。

売出し発表直前の7月5日の終値608円に対し、ローンチ翌日の7月6日の終値は656円(7.8%アップ)となり、需給悪化懸念の払拭はひとまず狙い通りの展開となったように見える。


今後も市場区分認定のための流通株式比率向上を企図した、主要株主による売出し+需給悪化緩和のための自己株式取得枠のアナウンスのパッケージ取引が相次ぐ可能性があるが、自己株式取得枠の実際の消化状況については注視する必要があると考える。




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