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執筆者の写真THE CODE 編集部

昭和電工事業PF改革(1.再編経緯の整理)

更新日:2021年12月22日


2021年7月8日付で、昭和電工の連結子会社である昭和電工マテリアルズが鉛蓄電池事業を譲渡する契約を締結した。

2020年4月、昭和電工が旧日立化成(現昭和電工マテリアルズ)を連結子会社化したことは記憶に新しい。


当該コーポレートアクションは、化学産業のバリューチェーンの川上~川下の垂直統合と捉えられるが、連結子会社化後も昭和電工は「持続的な成長を実現するポートフォリオマネジメント」と称して、昭和電工マテリアルズ配下の複数事業の再編を行っている。

連結子会社化以降の主要な事業再編の内容を、昭和電工マテリアルズのニュースリリースから整理すると以下の通りだ。


・昭和電工マテリアルズに関連する事業再編


今回の鉛蓄電池事業に関しては、譲渡の決定の前段においてもタイにおける子会社合併を実施しており、当事業における経営資源の集約・効率化に腐心してきたことが伺えるものの、コア事業と掲げるエレクトロニクス事業やモビリティ事業、次世代事業としてのライフサイエンス事業への積極投資を行う、という同社のスタンスが改めて明確になった。


一連の事業売却において特筆すべきファイナンシャルスキームは現状なく、事業売却は予定通り進んでいると考えられるが、同社の保有する知財や技術の観点で、昭和電工及び昭和電工マテリアルズの事業ポートフォリオを捉えた際、一連の事業売却をどのように評価することができるのか、次回「昭和電工事業PF改革(2.知財観点の整理)」というテーマで改めて整理したい。

所感 蓄電池事業の今後に関して


売却先のPEファンドが今後どういったExitを想定しているかは不明であるものの、蓄電池は再生可能エネルギーの領域においては重要な技術の一つである。


鉛蓄電池も蓄電池における一定のシェアを有しており、経済産業省の生産動態統計によると、直近2021年5月には蓄電池全体の生産金額の15.8%を占める。近年、アルカリ蓄電池やリチウムイオン蓄電池の割合が増加しているが、依然として一定のシェアを有していることがわかる。他の蓄電池と比べて電力容量あたりの価格が低く、安定性に優れていることが特徴で、自動車のバッテリーや電力系統における災害時のバックアップ用途などで広く用いられている。

(経済産業省生産動態統計をもとに編者作成)


例えば、再生エネルギー関連領域の中でも太陽光発電(メガソーラー)のプレイヤーに着目すると、川上のソーラーパネル・モジュラー製造は価格競争も激しく、Jinko SolarやJA Solarなどの主要プレイヤーはEPC(発電所の設計・調達・建設)やO&M(発電所の維持管理)まで含めた垂直統合を志向し、事業規模拡大や収益性の維持を図っている状況である。実際にJinko Solarは蓄電池事業も保有しており、このような再生エネルギー領域におけるプレイヤーへのExitも場合によっては視野に入るのではないだろうか。


再生エネルギーの効率的な利用といったアングルで当該事業を捉えると、ESGのEに貢献し得る事業とも考えられ、今後の動向に注目したい。



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