9月24日、マネックスグループのアクティビストファンドの運用者であるカタリスト投資顧問は、9月7日に親会社であるENEOSホールディングスとGSが共同で設立した買収ビークルが提示し、NIPPO(1881)の取締役会及び特別委員会が賛同、株主に応募推奨している4,000円の公開買付価格に対して、少数株主の利益の保護のために最善の努力を以て交渉、意思決定したとは判断できず、応募推奨には疑問があるとし、下記を求めた。
新たな財務アドバイザーからの株式価値算定書およびフェアネス・オピニオンの取得
積極的なマーケット・チェック(潜在的買収者の追求)の実施
特別配当との比較の実施
また、カタリスト投資顧問は、独自のキャンペーンページを10月7日に設定した。
9月27日、イギリスの大手ファンドのシルチェスター(9/22時点でNIPPO株式を4.81%保有)はカタリストの考えを概ね支持すると発表し、10月4日、香港のヘッジファンドのOASIS Managementも4,000円のTOB価格は割安であり少数株主の利益を保護しておらず、5,600円であればまだ公正と言えると意見表明した。
また10月7日にはOrbis Managementが4000円のTOB価格は割安であり、カタリスト、シルチェスター、OASISの見方を支持する表明した。
一方、ブルームバーグによれば、ENEOSホールディングス及びNIPPOへ取材したところ、両者ともに4,000円は少数株主の利益に配慮した価格であり、TOB価格の引き上げは検討していないとされている。
所感
本件は親子上場における支配株主が子会社を非公開化させる場合のTOB価格の是非について、少数株主である複数の機関投資家が一石を投じる展開となっている。THE CODE編集部としては、NIPPOの少数株主の利益を保護する立場の特別委員会や取締役会から追加的に丁寧な説明がなされることを期待する。
また、9月9日の本サイトの記事「NIPPOへのTOBはENEOSの資金調達?」でも指摘しているとおり、本件取引はENEOSホールディングスにとっては資金調達でもあり、実はTOB価格の引き上げはENEOSホールディングスにとってはNIPPOによる自社株買の価額が増加するため、ネット資金調達額が増加をもたらす。一方で、GSとしてはTOB価格の引き上げはNIPPO株の取得価額が単純に増加するだけでありデメリットしかないことになる。したがって、実はTOB価額の設定については、共同買収者であるENEOSとGSとで利害が必ずしも一致していない構造となっている。
この点、まだ正式発表には至っていないが、直近報道されているENEOSホールディングスによるJREの買収(NIPPO株の共同買収者であるGSがJREの株主の1社とされる)とも本件TOBは近接したタイミングであることから、NIPPOのTOB価格の動向並びにTOBの成否が、ENEOSホールディングスによるJREの買収にも影響を与えるのか否か注目される。
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